大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(う)2236号 判決

被告人 林貞恵

〔抄 録〕

所論池田信子の供述を録取した司法警察員作成名義の供述調書の証拠能力の有無について按ずるに、元来刑事訴訟規則第五十八条において定められた要件の一ないし二を欠くような場合でも、それだけで直ちに公務員の作るべき書面が無効となると断ずべきではなく、その要件の欠缺に拘らず書面の体裁、記載内容等によつてその正当に成立したことを疑う必要がないときは、これを有効に成立したものと解しその証拠能力を認め得る場合があることは多言を要しないところであつて、所論供述調書には、作成者である司法警察員警部補元木達の署名(その筆蹟が井野上誠明に対する昭和三十三年十一月二十日付の元木達作成名義の供述調書の筆蹟及びその末尾に存する元木達の署名の筆蹟と異るとは必らずしも認められない。)はあるが、その名下の押印を欠き且つ調書の契印をも欠いているけれども、供述者たる池田信子の署名指印は間違なく存在しており、その供述内容の一貫性、連続性も存在していると認められるから、これを刑事訴訟法第三百二十一条第一項にいわゆる被告人以外の者の供述を録取した書面であると称するを妨げないのみならず、原審公判においては、右供述調書は当事者間において証拠とすることの合意が成立し且つ適法の証拠調がされているのであるから、当事者間においては右供述調書が司法警察員警部補元木達作成にかゝるものであることは争がなかつたものであるというべく、よつて、原審が前記瑕疵は右供述調書の証拠能力を害するものではないとして、採証の用に供したのは相当であるといわなければならない。

(三宅 東 井波)

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